雇用と労働

外国人の採用条件
 採用条件については、外国人であっても日本国内で就労する場合には日本人と同等に、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等が適用されます。
 労働基準法第3条には、労働条件面での国籍による差別を禁止しており、外国人であることを理由に低賃金にするなどの差別は許されません。
 また、外国人の就労に関しては、日本に生活基盤を有していないことや日本語に不慣れなこと、それに日本の労働慣行に習熟していないことなどから様々な問題が起こりがちです。
 そのためにも、“外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針”を守り、日本語を理解できない外国人労働者に対し日本の労働関係法規を理解させるための企業側の努力が必要です。

外国人労働者と賃金差別

 近年、日本国内の労働力不足が表面化しつつあり、外国人労働者を活用する流れがあります。また雇用の形態も多様に なり、様々な問題が発生していることも見逃せない状況といえます。そこで労働の対価としての賃金について、日本人との格差や差別的扱いをうけるケースも多発しており、企業側の管理者としては労働基準法等の労働者保護法規や出入国管理及び難民認定法(以下、入管法。)での外国人労働者について取扱いについて把握しておく必要があります。
①国籍による賃金差別の禁止
 労働基準法第3条において国籍により賃金や労働時間などの労働条件について差別的取扱いをする事を禁じています。同一事業所内において日本人労働者と比較して職種や能力等からみて合理的理由がなく低い賃金は許されません。
②中間搾取(ピンハネ)の禁止
 労働基準法第6条は、「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と定められています。
③最低賃金制度
 最低賃金制度も当然に外国人にも適用されます。最低賃金制度とは賃金の安い労働者について、業種や地域ごとに
賃金の最低額を保障しようというもので、現在、各都道府県の地方最低賃金審議会の審議に基づき、各都道府県労働基準監督局長が地域別・業種別最低賃金を決定・公示しています。
 事業主は最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりませんので、この水準を下回る賃金契約は法違反となり、無効となった部分は最低賃金額と同等の契約があったものとみなされます。
よって最低賃金額より低い賃金を定めても、最低賃金額を支払う義務が生じますので、都道府県別で公示されている最低賃金額を確認しておく必要があります。
④在留資格での制限
 就労が認められる「人文知識・国際業務」、「技術」、「技能」等の各在留資格取得の条件として入管法にて定められる事項として、当該外国人労働者が日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが条件となっております。
また、現在の入管法にて認められている上記の就労可能な在留資格においては担当する職務に関連する大学の専攻学部等を卒業したか、又は実務経験が問われるなど単純労働ではない業務にて認められていますので、新卒及び中途にて採用する場合には日本人を採用した場合の賃金を参考としてそれと同等額以上の賃金を確保してければなりません。

契約を下回る賃金

 外国人社員を雇用する際には、入国管理局に対してビザ変更・在留資格認定証明書の申請など、何らかのビザ手続きを行うケースがほとんどです。
これらの手続きを行う際は、外国人労働者である申請人自身や受入企業側の状況などを審査されるため、入国管理局から様々な資料の提示が求められることとなります。その資料の中に、在留期間中に安定した収入が確保されているかどうか(日本人と同等額以上の報酬があるかどうか)を確認するものとして労働条件通知書や雇用契約書の提示が求められます。 
 ここで問題となるのは、審査の際に提示した雇用契約書等の賃金額よりも、実際には下回る賃金額で雇用した場合の扱いです。まず、在留資格の観点からは直ちに在留資格が取り消しになるといったことは考えにくく、ビザ取得後に日本で安定的な収入を得ているか否かの確認審査は在留期間が満了する2ヶ月前から行えるビザ更新(在留期間更新許可申請)の際に行われます。
その時には、原則として所得証明(通常は源泉徴収票)及び在職証明書を提示することとなりますので、初めのビザ手続きの際に提示した雇用契約書等の賃金額と著しく乖離している場合には、日本にて安定した収入を得る活動を行っていないと判断され、その在留期間更新許可申請が認められないといったことが発生します。
 それ以前に、労働条件通知書や雇用契約書にて当該外国人労働者へ提示した賃金額よりも下回る賃金しか支払っていないと、契約上での不法行為となり未払い賃金として労働基準監督署等へ通報され、臨検の対象となる可能性もあります。
その際には賃金の支払い状況を賃金台帳や給与支払明細書等で調査され、当初に通知及び契約した賃金額とそれを下回る賃金額との差額分が未払い賃金として支払命令を受けることとなります。
さらに、それ以外の労働時間の実態調査において時間外等が発生し未払い賃金となっている場合には、勿論支払いの対象となるので注意が必要です。

寄宿舎
事業附属寄宿舎規程(一般)建設業附属寄宿舎規程(建設関係)があり、法規に基づく、寄宿舎を準備しないといけません。

不法滞在を理由とした解雇

 ここで問題となるのが、一度雇用した外国人が不法滞在であることを理由として解雇ができるのかどうかです。
この場合、2通りのケースが考えられ、1つめは雇用前に履歴書やパスポート等を確認して問題ないと判断したにもかかわらず、その後、本人が提出した資料が虚偽のものであり実は不法滞在であることが判明した場合です。
この場合、採用時の経歴詐称は解雇の対象として就業規則等の懲戒規定に列挙されているのであれば、労働基準法上において当該労働者の責に帰すべき事由による解雇という事で管轄労働基準監督局の認定を受ける方法により対処は可能です。
 もう一つのケースとしては、事業主が採用前より外国人の在留資格等がなく不法滞在者である事を把握しながら雇用した場合です。
 当然、入管法での不法就労に該当しますが、雇用関係が成立している以上、労働者保護法規としての労働基準法及び当該事業場の就業規則に照らし合わせて解雇を取り扱わなければなりません。その場合にはもちろん30日前の解雇予告又は30日分以上の平均賃金の支払い義務が生じます。

不法滞在と労働者保護法

 不法滞在であるかどうかにかかわらず、原則として外国人労働者にも労働者保護法が適用されるため、外国人も民事及び労働監督行政上の保護を受けられるような様々な措置が取られています。
 例えば、時間外労働等の割増賃金分を含む賃金未払い等がある場合には、企業側へ賃金を支払わせる交渉や裁判等の手続きに必要な期間は労働基準監督署からオーバーステイの事実を入国管理局へ通報しないという扱いがあります。
 ただ、実際には少なくとも労働災害の事実関係の聞き取り調査が終わるまでの間は通報を差し控えるというのが通例のようであり、その事実調査が終わると入管へ通報されることもあるようです。肝心な労災保険の支給に関しては当該不法就労者が本国に帰国後に海外に送金することで支給されます。
 また、入国管理局においても、オーバーステイの外国人が賃金未払いの状況にあるときは、仮に不法滞在で収容していても紛争が解決するまでは日本に滞在できるよう、強制送還の手続きを見合わせているケースもあります。

パスポートの保管

 外国人労働者のパスポートについては、入管法等により外国人労働者本人が常時携帯することが義務づけられておりますが、外国人登録証が発行されればそれを常時携帯することになり、パスポートの常時携帯は不要となります。人権侵害の見解から、パスポートの保管は必ず本人保管する必要があります。

ビザ更新の協力義務

 在留期間更新の手続きは、雇用している外国人労働者が、現在与えられている在留資格と同一の活動を行うため在留期間を越えて日本に在留する場合に必要な手続きです。従ってこの在留期間を延長して日本で引き続き就労することを希望する場合には、在留期間満了の日の2ヶ月前よりその満了日までの間に、本人又は代理人が居住地を管轄する入国管理局に出向いてビザ更新(在留期間更新許可申請)を行うことになります。
 この手続を怠って在留期間が経過した場合には、外国人本人が不法残留として退去強制の対象となるほか、刑事罰の対象ともなり3年以下の懲役若しくは禁固又は300万円以下の罰金が課せられる可能性もあります。会社側でも就労している当該外国人労働者の在留期間満了日をチェックし、申請を怠ることのないよう本人に注意する必要があります。
 また、在留期間更新許可申請の際には現在も同じように在職しているかの証明書とそこでの所得証明書の提示を入管当局より同申請の審査に必要なものとして要求されますので、事業主としてもそれら書類を外国人労働者が求めてくれば証明書等を出さなければなりません。これは厚生労働省の “外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針”においても記載されています。
 また、実務上、大都市に所在する入管当局の本局での在留期間更新許可申請ともなりますと、その申請に半日かかったり、又はそれ以上に時間を要することもありますので、有給休暇等を利用して行いたいと本人が申し出た場合には勤務時間の配慮等、必要な援助を行なうようにして下さい。

外国人留学生とアルバイト

 外国人留学生や外国人配偶者をアルバイトとして採用する場合には、日本人を採用する場合と全く同じと言うわけではありません。面接時には必ずパスポートを見せてもらい、在留資格とその期限を確認する必要があります。
外国人登録証などで確認すると本人が更新をしていない場合などもあり、たびたびトラブルになることがあります。
 また、1週間につき28時間以内(聴講生は14時間という定められた労働時間を守るようにしましょう。
留学生などの場合、アルバイト代を稼ぐために「もっと多く働かせて欲しい。」と申し出る事がありますが、規定の労働時間を越えた場合には不法就労などに該当することもあるので雇用主は注意が必要です。
 さらに、アルバイト内容ですが、バーやスナックでの接客など風俗営業に該当するものは原則としてできません。
見落としがちなのは麻雀店、パチンコ店、ゲームセンターなどで従業員としてアルバイトする場合で、これらの業種も風俗営業に該当するので一般的には留学生や就学生などを雇用する事はできません。
 外国人の留学生や就学生を採用する際には、彼らの本分は学生であると言う事を忘れないで下さい。アルバイトに熱中するあまり学校での出席率が悪くなり、結果として在留資格の更新などが不許可となってしまうこともあり、本業である勉強が手につかなくなるほどの仕事量や、深夜帯におよぶ業務などは避けるべきです。

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